Run After Deer! Venezia Architecture Biennale 2012



 ベネチア建築ビエンナーレ2012 中原逐鹿展コンペティション

Concept

概要

  • 鄭州は中原の中心に位置し、南北には北京と深セン、東西には上海と西安を結ぶラインの交点となる、交通の十字路となる都市である。省として約1億という中国最大の人口を持つ河南省の省都であり(1954年に開封から鄭州に省都が移った)、旧市街地東部に人口数百万人規模の新都市「鄭東地区」を計画している。そのうち鄭東新区の「龍湖地区CBD副中心」は、龍湖に浮く環状の島として、2010年より磯崎新による都市計画が進められている。
  • ヴェネツィアのパラッツォ・ベンボにおける展示では、「鄭東地区」及び「龍湖地区CBD副中心」が、3つの部屋に展示され、それぞれの「VISITORS」「SIGNATURES」「SOCIAL NETWORK」というテーマにて展示される。「VISITORS」の部屋では、鄭東地区を舞台として、水系、交通系、情報系の重なり合いによる「都市の生成」の様子が示される。「SIGNATURES」の部屋では、「龍湖」に浮かぶ水上リングに建てられる建築群とそのインフラ設備が生み出す空間の様子が示される。「SOCIAL NETWORK」の部屋では、「龍湖」のリング中心の水上部分に様々に発生する様々な催し物のあり方が示される。
  • もっとも重要なことは、これら3つの部屋が、再び東京のインターコミュニケーションセンターにおける1997年の海市展と同じく「VISITORS」「SIGNATURES」「SOCIAL NETWORK(海市展ではINTERNET)」と名付けられ、不確定な複数の参加者によって会期中に変化していくことである。ヴェネツィアで展示される3つの部屋は、他者の介入を受け入れつつ、開かれた都市計画の可能性を示すことになるだろう。海市展から15年を経て、また「孵化過程=ジョイント・コア・システム」からちょうど半世紀を経て、奇しくも海市が最初に展示されたヴェネツィアにて、磯崎新による開かれた都市計画のコンセプトは、新たな敷地を舞台に展開することになるだろう。
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ヴィジターズ

  • 都市の生成
  • 鄭州市と開封市の間に広がる「鄭東地区」では、北側に黄河が流れ、北宋の時代に開封市から発展した運河が多数流れており、水路のネットワークが発達している。また、この地区は中国大陸の南北東西を結ぶ交通の結節点として発展してきたため、鉄道や道路といった地上交通網が発達している。このようなネットワークを基盤としながら、現在「鄭東地区」では、同時多発的にクラスター状の都市開発が進められている。
  • このような都市空間の特徴を踏まえ、「ヴィジターズ」の部屋では、鄭州・鄭東新区・開封の全貌が示される。部屋の中央には置かれるのは、人口数百万規模の都市の全体模型である。背後の壁には、黄河、万里の長城、水平線が描かれ、中原を中心とした中国の全体像が抽象的な形で示されるだろう。この部屋がシミュレートするのは「都市の生成」の様子である。ネットワークが基盤となる。水系(自然のネットワーク)、交通系(人工物のネットワーク)、情報系(他者とのネットワーク)という三つのレイヤーの広がりと重なりによって、ネットワーク状に「都市が生成」する様子が浮かび上がる。
  • 「都市とは変動のプロセスそのものである。その生成には始まりも終わりもない。時間は途切れることなくつながっていて、時々に現れ出る姿は未来都市でもあり、廃墟でもあるのだ――」(孵化過程より)

シグネチャーズ

  • 空間の構築
  • 龍湖に浮かぶCBD副中心は、ヴェニスと同じように、周辺から独立した閉鎖系の都市空間として計画されている。外周には、高さ120mで統一されたオフィスタワーやホテルが建ち並び、内周には湖を囲むようにして計画されたアリーナ型の商業施設や文化施設が建ち並ぶ。また、この地区を象徴する建物として、240mのツインタワーとCity Gateが、南北に流れる水路を跨ぐように配置されている。そして、中央環状道路部分には、これらの建築群を連結するように、共同溝や交通システムといった都市のインフラストラクチャーが、レイヤー状に区分けされ、計画されている。このように都市のインフラストラクチャーと建築が一体となった「Megastructure」を計画することで、CBD副中心における都市空間の骨格が形づくられている。
  • このような都市空間の特徴を踏まえ、「シグネチャーズ」の部屋では、龍湖に浮かぶドーナツ形状の島に建てられる建築群とインフラ施設が示される。島の外形は長軸2km強、短軸1km強の楕円形状をしている。中心部には、直径400mの正円二つを内包する形の楕円上の湖が配置され、短軸には運河が通る。内側と外側の楕円の中間部には、LRTが走る軌道とインフラのチューブが、リング上に島を一周する。外側のリングには、8組のグローバルな建築家による14棟の超高層建築を含む、十数棟の超高層建築が建てられる。参加建築家はSANAA、Studio Mumbai Architects、Asymptote Architecture、Klotz Asociados、Isozaki+Hu Qian Partners、Eduardo souto de moura、Ensamble Studio、Christian Kerez Zurich AGであり、これらの設計は既に進んでいる。1/500の会場模型では、外周部にアクリルによって表現される。これら計画済みの外側のリングに対して、内側のリングは具体的な建築デザインが不確定なまま示されている。一定の容積率や斜線制限等の建築ルールが与えられ、その範囲内で各敷地に対し、指名された建築家がそれぞれのデザインを提示する。会期中、内側のリングの建築物は、順次、署名付きの建築家(=シグネチャーズ)によるデザインに置き換わり、都市における「空間の構築」の様子が示される。

ソーシャル・ネットワーク

  • 時間の過程
  • CBD副中心の都市計画において、中心の湖を「水上慶典広場」と見立てることで、四季に応じた各種イベントが催される計画となっている。また、この湖の周りにはそれらイベントを演出するための各種装置が配置されている。イベントの観客席としては、アリーナ型の商業施設の上部に、湖を囲むリング状の空間が設けられ、VIP席としてのCityGateが南側に配置されている。湖の二つの円の中心には、120mのタワーが計画されており、イベント時に演出装置となる。湖の北側には、艀が係留されており、イベント時には可動ステージとして、様々なタイプのステージに対応できるよう計画されている。これらの装置からつくりだされる多様なイベントは、都市生活にリズムを生みだし、「ソフトウェア」としての都市空間を形成する。
  • このような都市空間の特徴を踏まえ、「Social Network」の部屋では、龍湖に浮かぶ環状島中心部の、楕円状の水面に焦点が当てられる。楕円はそれに内接する二つの円を持つ。暗い部屋の正面には、楕円と二つの円の中心が示される。インターネットを通して会場に寄せられた意見や提案は、可視化されて左右から順に現れる。それらは磁力に引き寄せられるように、二つの円がつくる磁場に引きつけられ、互いにぶつかり、戦うことで、変化を遂げていく。
  • 環状島中央の水上では、四季に応じて都市生活のための様々なイベントが行われる。会期中、都市がイベントとともに変化するという「時間の過程」が、ここにパフォーマンスとして示されることになる。「中原に鹿を逐う」という故事を借りて、中原に群雄の戦いが繰り広げられるように、ここでは水上におけるゲーム化されたイベントが可視化される。送られた情報は、一定のプログラムによって変換され、会場に転送される。世界各地から鄭州の都市計画に関する様々な情報が集まり、それらは相互に干渉し、衝突しあい、創発を生む。カテゴリーの違うものどうしが、絡み合うこともあるだろう。インターネットを通した不特定多数の参加者による予測不可能な出来事が、光の変化として会場に現れる。水上の「逐鹿ゲーム」は、あらゆるものに開かれている。その結果は積み重なり、次第に結晶化されていくだろう。












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